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”売れるラノベの法則は主人公に努力させない”というのは本当なのか検証してみた

f:id:shinji92:20161001030551j:plainラノベ業界最大手の角川の社長・川上量生氏は、あるインタビューでこう発言している。

 例えば、ライトノベルの分野で言うと、今は売れるための絶対の方法があるんです。
 ライトノベルの主人公は努力しちゃダメなんです。読む側が自分を投影できなくなるからです。ヒロインは都合よく向こうからやってくる超能力などの能力は、いつのまにか勝手に身についている。今のライトノベルの多くが、そういう設定で書かれていますよ。

――恋人や能力を努力して勝ち取るのではなく、何もしなくても、いつの間にか恋人と能力を手に入れているという設定でないと売れないということですか。その努力の過程こそが、今までは物語の根幹だったはずなのに。

 そうです。今は努力できる立派な人物が主人公だと、読む側が気後れして感情移入できないんですよ。主人公は読者と同じ等身大の人間。そして、主人公に都合のいい物語を求める傾向が進んできた。文学の世界でもそうなってきていると思います。これらはネットの影響が大きいと僕は思います。

全文:http://www.yomiuri.co.jp/yolon/ichiran/20160923-OYT8T50010.html

つまり、売れるラノベは「主人公に努力をさせず、都合のいい展開が繰り広げられる」というわけだ

この発言に対し、ラノベファンからは「それはおかしい」という意見がちらほらある。

しかし、これでもラノベ業界最大手の社長なわけだ。トップの人が適当な事を言うわけがないじゃないか。だから、売れるラノベの法則は「主人公に努力させない」というのが本当なのか、白黒つけようじゃないか

というわけで「このライトノベルがすごい」やオリコン、円盤の売り上げなどをもとに、以下の売れている最近のラノベを厳選した(アニメ化した作品のみ)。

やはり俺の青春ラブコメは間違っている
ソードアート・オンライン
ノーゲーム・ノーライフ
魔法科高校の劣等生
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか
この素晴らしい世界に祝福を!
Re:ゼロから始める異世界生活
冴えない彼女の育てかた
GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり
オーバーロード
落第騎士の英雄譚
灰と幻想のグリムガル

※川上氏は「今は売れるための絶対の方法があるんです」と発言しているため、最近アニメ化されたものを中心に厳選


  • やはり俺の青春ラブコメは間違っている

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。11 (ガガガ文庫)

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。11 (ガガガ文庫)

アニメ2期の範囲では、主人公が、部活という自分たちの居場所を守るため、いろいろ考え、努力していた。それが失敗に終わる事もあり、ヒロインの雪ノ下との間に亀裂が入ったり、決して主人公に都合のいい展開ではなかったし、部活と言う自分たちの居場所を守るため必死に努力していた。

結果:川上氏の発言に当てはまらない


  • ソードアート・オンライン

ソードアート・オンライン (18) アリシゼーション・ラスティング (電撃文庫)

ソードアート・オンライン (18) アリシゼーション・ラスティング (電撃文庫)

アインクラッド編では、主人公は他のプレイヤーと比べかなり高レベルだ。睡眠と食事以外はほとんどレベル上げをしている→努力している。
さらには作中に出てくるサチが死亡し、主人公はトラウマになり、その後はギルドに入らず、ソロで行動することになるなど、決して主人公に都合のいい展開ではない。

結果:川上氏の発言に当てはまらない


  • ノーゲーム・ノーライフ

ノーゲーム・ノーライフ 9 ゲーマー兄妹は一ターン休むそうです<ノーゲーム・ノーライフ> (MF文庫J)

ノーゲーム・ノーライフ 9 ゲーマー兄妹は一ターン休むそうです<ノーゲーム・ノーライフ> (MF文庫J)

主人公と、その妹のシロは他の登場人物とは次元が違うほど強い。ピンチに陥る場面は何度かあるが、主人公や妹のシロが試行錯誤し、ピンチを乗り切っている。
あまり努力しているといった描写はないし、主人公に都合のいい展開、と言えなくもない。線引きが難しいが、どちらかと言えば川上氏の発言には当てはまる作品だと思われる。

結果:川上氏の発言に当てはまる


  • 魔法科高校の劣等生

魔法科高校の劣等生 (20) 南海騒擾編 (電撃文庫)

魔法科高校の劣等生 (20) 南海騒擾編 (電撃文庫)

主人公は魔法実技の授業を除くあらゆることをこなし、弱点を補える魔法を使える。また武術や忍術も使え、チートレベルに強い。
しかしその強さは才能ではなく、努力によるものが大きい。強くあるため、毎日の訓練をかかさない。
バトルシーンではあまりに主人公が強すぎるため負ける事はなく、主人公に都合のいい展開と言えるかもしれない。だが努力していない、というのはありえない。

結果:川上氏の発言にあてはまらない


  • ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか11 (GA文庫)

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか11 (GA文庫)

アニメ1期終盤でこそ割と強くなっているが(他の強者と比べれば弱い)、最初は危ないところをヒロインに助けてもらわなきゃ命を落としていたほど弱かった。
そこから必死な努力を積み重ね、英雄になるという目標を掲げ成長していく。
仲間の命が危なくなったところを自らの決死の活躍で逃れるなど、都合のいい展開ばかりではない。

結果:川上氏の発言に当てはまらない


  • この素晴らしい世界に祝福を!

この素晴らしい世界に祝福を! (9) 紅の宿命 (角川スニーカー文庫)

この素晴らしい世界に祝福を! (9) 紅の宿命 (角川スニーカー文庫)

異世界に転生する特典にチートスキルをもらえるのにも関わらず、代わりに女神さまを連れて行った主人公。だが、ピンチに陥った時は自らの知能を生かして逃れるなど、主人公にとって都合のいい展開は続く。
努力に関しては皆無だ。努力どころか、ファンタジー世界にも関わらずニートに近い生活を送っている。

結果:川上氏の発言に当てはまる


  • Re:ゼロから始める異世界生活

Re:ゼロから始める異世界生活9 (MF文庫J)

Re:ゼロから始める異世界生活9 (MF文庫J)

アニメ2クールの範囲では、主人公にとって苦難な展開が立て続けに起こる。しかし、それまでのループで得た情報を繋ぎ合わせ、成功の道へ進む。主人公の努力なしでは成立しない展開だ。
さらにアニメでは範囲外だが、何度もタイムリープし、ようやく達成したと思いきや別の場所で急展開があり、タイムリープしてもやり直せない状況になるなど、主人公にとって都合のいい展開とは絶対に言えない。

結果:川上氏の発言に当てはまらない


  • 冴えない彼女の育てかた

冴えない彼女の育てかた10<冴えない彼女の育てかた> (富士見ファンタジア文庫)

冴えない彼女の育てかた10<冴えない彼女の育てかた> (富士見ファンタジア文庫)

ヒロインは最初から主人公に好意を持っていたりと、アニメ1期範囲ではかなりご都合主義。
作中に主人公の努力と言えば、ゲームの製作費を稼ぐためにアルバイトくらいだろうか。どちらかと言えば主人公には都合のいい展開が多い。
そもそも、この作品が売れたのは「ヒロインたちが可愛い」というのが一番の理由だ。

結果:川上氏の発言に当てはまる


  • GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり

ゲート 9―自衛隊彼の地にて、斯く戦えり (アルファポリスCOMICS)

ゲート 9―自衛隊彼の地にて、斯く戦えり (アルファポリスCOMICS)

主人公率いる自衛隊が、敵陣営と比べ圧倒的に強いため、ほとんど苦戦しない。努力といったものもなく、主人公にとって都合のいい展開が多い。

結果:川上氏の発言に当てはまる


  • オーバーロード

オーバーロード11 山小人の工匠

オーバーロード11 山小人の工匠

主人公があまりに強すぎるため、ほぼ苦戦しない。主人公にとって都合のいい展開が多いのも事実。

結果:川上氏の発言に当てはまる


  • 落第騎士の英雄譚

落第騎士の英雄譚(キャバルリィ)10 (GA文庫)

落第騎士の英雄譚(キャバルリィ)10 (GA文庫)

才能が全くない主人公が、努力だけで才能のある者たちと渡り合う話。努力だけで才能にも勝る力を手に入れ、強者と渡り合う。つまり努力なしでは話が成り立たない。
そんな主人公だが、実家からの嫌がらせのせいで、学園で進級できなくなったりしたり、そんな主人公を嘲ったりする生徒など、惨めな思いをするなどと、決して主人公にとって都合のいい展開はない。

結果:川上氏の発言に当てはまらない


  • 灰と幻想のグリムガル

灰と幻想のグリムガル level.9 ここにいる今、遥か遠くへ (オーバーラップ文庫)

灰と幻想のグリムガル level.9 ここにいる今、遥か遠くへ (オーバーラップ文庫)

主人公率いるチームは、ゴブリンすらにも苦戦するほど弱い。さらにはチームのリーダーが死亡するなど、決して都合のいい展開ではない。
そんな弱小チームを、努力を重ね、敵と渡り合っていく。

結果:川上氏の発言に当てはまらない

結果

川上氏の発言に当てはまる作品は、12個中5個。川上氏の発言は「嘘」と言っていいだろう

上に挙げた作品は、現在のラノベの中でトップレベルの人気を誇る作品だ。その作品の半分以上は「努力」している。

「売れるラノベの法則は主人公は努力せず、都合のいい展開が続く」などと言うのは全くの嘘である。

上に挙げた12作品のうち、8作品は角川の作品だ。にも拘わらず、社長の川上氏はこのような間違った解釈を公言しているのだ。

ご都合主義な展開がなろう作品には多い

最近は小説家になろうから書籍されるラノベが非常に多い。

kazenotori.hatenablog.com

こちらの記事を見ると、川上氏は恐らくなろうから書籍化される作品は売れるものが多いから、「売れる法則」と思っているのではないだろうか。

—— 実質的な多様性が減る、とは?
川上 例えば、「小説家になろう」っていう小説投稿サイトがあるんですけど、そのランキング上位の小説の設定がほとんど一緒になってたりするんですよ。だいたい転生もので、主人公が生まれ変わって、別の人生を歩んで、活躍するっていうストーリーです(笑)。
—— ユーザーの願望が(笑)。
川上 投稿されている小説の中には本来多様性があるはずなんだけど、ランキング上位に来るものは全部似たようなものになる。ニコ動だって、いろいろな作品が投稿されていますが、何かが流行るとそれ一色になりがちです。参加数が多いってことは、逆に実質的な多様性を減らす効果があるんです。

なろうから書籍化された作品は安定して売れやすい。アニメ化していないラノベの中で、オリコンで上位を占めているのはなろう作品が多い。実際現在アニメ化されたなろう作品は全て成功している。

shinji92.hatenablog.com

そして、なろうでは「異世界に転生・召喚され、チートスキルで無双」というストーリーが多い。つまり主人公にとって都合のいい展開だ。努力もせずに無双するのだ。

そういったなろう出身作品が次々と成功しているから、川上氏は「ご都合主義が売れる法則」と発言したのではないだろうか。

ちなみになろう作品が売れるのは、「なろうでの読者が買ってくれるから」というのも理由の一つだろう。また書籍化される作品はなろうでのランキングは上位だ。つまり人気は保証されているから、書籍化されても安定して売れるというのも理由の一つなのかもしれない。

最後に

何百万部も売れているような作品は、他の作品と比べ独自性があると自分は思う。上であげた俺ガイル、SAOや、禁書、ハルヒ、はがないなど、他の作品とは違う面白さがある。今でこそそれらの作品に影響されたものはあるが、その発端となっているものは莫大に売れている。

なろう出身の異世界転生系のラノベは、出せば割と売れるけど何百万部も売れるほどのヒットはしづらい、という事ではないだろうか。そう解釈すると、川上氏の発言はあながち間違っているわけでもない。

しかしオバロ、GATEなど、ご都合展開の作品は大ヒットしている。まだアニメ化していないなろう作品も、アニメ化したらオバロ並に大ヒットする可能性はある。

しかし、同じような作品が次々とアニメ化されたら間違いなく飽きられる。つまりなろう作品は飽きられたらタイムリミットだろう。

つまり売れるラノベの法則は「今までと違うストーリーで、キャラも可愛くて話も面白いこと」と結論付けよう。飽くまでも僕の意見なので異論は認める。



こちらの記事もどうぞ
shinji92.hatenablog.com